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地域を見守る優しさ:黒板メッセージに込める想い
「杉戸4丁目」交差点にある黒板をご存知ですか? 信号待ちのときに見かけるチョークで書かれた心温まるメッセージ。この黒板がいつから始まり、誰が書いているのか、気になります。今回、その謎を解明するために、黒板メッセージを毎日更新している落合英美さん、千代子さんご夫婦にお話を伺いました。お話から垣間見えた、お二人の優しさと、メッセージに込めた思いを紹介します。
【仲良しご夫婦】
お話をうかがったのは、落合英美(おちあいひでみ)さんと千代子(ちよこ)さんご夫婦。お二人は中学の同級生で、「私の一目惚れ。気持ちが優しい人なんだよ」と英美さんが教えてくれました。
「『全力でお守りします』って皇太子さまより早く言ってくれたの(※)」と千代子さんも当時を思い出しながら微笑みます。「二人で一人前ね」というほど、お二人は大変仲睦まじく、今回、突然のインタビューにも快く応じてくれました。
※現天皇陛下が皇太子だった当時、現皇后陛下の雅子妃に伝えたプロポーズの言葉。
【黒板にメッセージを書いているのは誰?】
ずばり、書いているのは千代子さんです! しかし、書いた後は必ず「これで大丈夫かな?」と英美さんに確認してもらいます。
黒板メッセージを始めた当初も、英美さんから「ポジティブな言葉を選ぶといいよ」とアドバイスを受け、以来、前向きな言葉を選んでいるそうです。お二人が支えあっている様子がうかがえるエピソードです。
【どうして書き始めたの?】
「家にあった黒板に孫と絵や字をかいていたの」と千代子さん。千代子さんご自身、学校でみんなの前で黒板に書くのがとても緊張したそう。そんな経験から、少しでも気持ちが軽くなればいいなと、お孫さんが小さい時から黒板を使って一緒に遊んでいました。
お孫さんを思う気持ちから始まった遊びが、どうやって今のかたちになったのでしょう?
「2年ほど前に、長らく一緒に住んでいた義理の母が亡くなり、気持ちが落ち込んでしまって。子どもたちから、ぼうっとしているのではなく、何か一つでも続けられることがあるといいねと言われ、黒板に自分の気持ちを書くことにしました」とのこと。初めは、亡くなったお義母様との思い出や浮かんできた想いを書いていたそうです。
【どうやって言葉を決めているの?】
始めた当初から、千代子さんが考えたことや気持ちを書いています。例えば、仕事始めの月曜日には車が動き出すのでみんなが無事に過ごせるように「安全」。雨の日は「安心」していられるように、など。インタビューをした日の言葉は「敬愛」。千代子さんの好きな言葉です。「信号待ちで止まっている人が『いつもありがとうございます。楽しみにしてます』って声をかけてくれたりして。いくつになっても、感謝の気持ちやありがとうって言葉はいいなと思います。明日の敬老の日にも引っかけて敬愛にしました。明日は敬老の日だから「年輪」にしようかなって考えてます」
その時のご自身の気持ちを表すことが多いので、迷惑になっているのではと心配しているそうですが、千代子さんの言葉には、自然と周囲を気遣う優しさを感じました。
【感謝の言葉と元気をもらえる黒板メッセージ】
「毎日書くことで、自分のパワーにもなっています。責任感というほどではないですけど、毎日の張り合いみたいになって、逆にこっちが力をもらっています」と千代子さんは話します。黒板を見た方から声をかけられることもあり、逆に元気をもらうそうです。
以前、「笑顔で」と書いた際に、「この字を見て笑顔にならなきゃって思いました。ありがとうございます」という言葉を受け取り、元気づけられたエピソードも教えてくれました。
【黒板メッセージは毎日の楽しみ】
黒板メッセージには、同じ言葉が登場するときもありますが、毎日書いています。毎日書くのは大変ではないのでしょうか?
「全然そんなことないの。黒板の表面がザラザラですごく書きにくいんだけど、どうやったら上手な払いになるかなって楽しみながら書いています」とのこと。
「習ったわけじゃないから自己流なんですけど」という言葉には驚き。とても達筆なので、てっきり書の経験があるのだと思っていました。
もともと絵や字が好きだったという千代子さん。「版画版も結構いい線いったのよ」と教えてくれました。
【相手を気遣う夫婦がつむぐ黒板メッセージ】
ご自身のことを「ネガティブ千代子ちゃん。とても心配性」と表現する千代子さんですが、それは優しさの裏返しではないかと思います。
ご自身の心に浮かんだ言葉を書いていますが、周囲を気遣い、見守っているように感じました。心優しい千代子さんらしいです。そして、そんな千代子さんを見守り支えている英美さんの存在もあっての黒板メッセージ。
お二人とお話をしていると心がほっこり暖かくなります。ご近所にこんな素敵な人がいたんだなと、出会えたことが嬉しくなりました。
今日もそんなお二人の黒板メッセージが杉戸4丁目の交差点で見えるはず。みなさんも、近くを通った時は、ぜひ黒板メッセージを見てくださいね。
インタビュー・文:やまこ